■ 腰椎椎間板ヘルニア

椎間板は椎体と椎体の間にある軟骨組織で、中央部にゼラチン状の髄核を持ち外周はコラーゲンを大量に含む線維輪で構成されます。

 

この髄核や線維輪が正常な椎間腔(椎体の間の空間・隙間)から突出した状態を椎間板ヘルニアと言います。腰椎で椎間板が突出すれば「腰椎椎間板ヘルニア」となります。

 

ヘルニアは、ドイツ語で「本来あるべき場所から逸脱した状態」を指す言葉で、他の様々な病名にも使用されます(鼠蹊ヘルニアや脳ヘルニアなど)。

 

突出した椎間板が椎体の後ろを通る脊髄神経を圧迫し、神経根圧迫によって痛みやしびれを発します。通常は左右どちらかに偏って痛みを発症しますが、椎間板が真後ろに突出した場合には両側に症状が出ることもあります。

 

神経を直接圧迫するので、痛みが強く脂汗が出るほどの激痛になることも珍しくありません。自力歩行が困難になるほど痛むこともありますが、突出する位置・方向によってはどんなに突出していても痛みを感じないこともあります。

 

下肢の感覚が無くなったり、尿意を感じなくなる、排尿排便障害があるなどの場合には、医療機関による緊急の処置が必要です。

 

■ 保存療法と手術療法

標準的な対処方法としては保存療法と手術療法がありますが、これに関してはより詳しく説明しているサイトがいくつもありますので、そちらをご参照ください。

 

こちらでは、椎間板ヘルニアと認定され痛みもあるけれど、手術をせずに回復させたいという方のための情報を掲載しておきます。

 

■ 椎間板ヘルニアは回復可能?

最近良く知られるようになってきましたが、じつは椎間板ヘルニアの多くは手術無しで回復可能です。

 

医療機関でも70〜80%は自然回復すると認識され始め、急性期(急激な症状悪化)でなければ極力手術を避ける医師も増えてきています。

 

手術をするか否かの選択を迫られたけど手術に抵抗がある!という場合には、セカンドオピニオンを検討するのもひとつの手です。

 

椎間板は身体の軸を支える部位であり、手術によって体幹近くまでメスが入ることを考えれば、後遺症も含めそれなりのリスクを意識しなければなりません。医療技術の発達でリスクは減っているものの、切られる人間側の仕組みは何も変化していない訳ですから、手術によるリスクが完全に無くなるということはない、ということを理解しておく必要があります。

 

■ どうして回復するの?

椎間板ヘルニアの回復メカニズムはまだ不明な部分が多くありますが、ヘルニア部分をマクロファージが貪食し自然吸収する、という説明が主流になっているようです。

 

メカニズムははっきりしないものの、椎間板ヘルニアが自然治癒する現象は古くから知られていて、それゆえに「保存療法」という考え方が成り立ちます。痛みを軽減しながら、細胞の新陳代謝による自然治癒を待ちます。

 

■ 痛みのメカニズムは?

椎間板ヘルニアといえば突出した椎間板が神経圧迫を起こして痛みが出る、というのはいかにも当たり前のように思えますが、ヘルニアが大きくても痛みが出なかったり、逆にほんの少ししか突出していなくても強い痛みが出たりすることがあったりと、現状は神経圧迫だけでは説明しきれない問題を抱えています。

 

それはヘルニア切除手術後も手術前と同様の痛みが出たり、却って痛みが悪化した例からも推し量ることができます。

 

また痛み方・症状もそれぞれで、立てなくなるほどの激痛から慢性腰痛に似た鈍痛、運動機能障害、感覚麻痺、引き攣れ、など多岐に渡り、単純に神経圧迫のバリエーションと捉えるには無理があるように思えます。

 

この問題に関して代替医療や民間療法は様々な仮説を立てて実地による検証を繰り返してきました。

 

■ 当院ではこう考えます

運動機能障害や感覚麻痺が起こることを考慮すれば、椎間板ヘルニアによる神経圧迫は実際の症状を引き起こすものとして理解できます。

椎間板ヘルニア切除手術によって激痛や運動機能障害、感覚麻痺が無くなることがある、ということからも神経圧迫による症状があるということは納得できるでしょう。

 

しかし、慢性腰痛に似た鈍痛や引き攣れ・しびれなどに関しては、これらの症状が、姿勢などの条件が同じ場合でも日によって強くなったり弱くなったり、時に症状が無くなったりすることもあり、椎間板ヘルニアによる神経圧迫が原因とは言い切れません。

なぜなら、ヘルニア病変部分はそう簡単に出たり引っ込んだりするものではなく、ある意味“安定”しながら神経を圧迫し続けているからです。

 

もし、鈍痛や引き攣れ・しびれなども神経圧迫によってのみ出るとするなら、それらの症状に強弱の変化が出る度にヘルニア部分の形状は変化していなくてはならず、そのように考えるにはいささか無理がありすぎると思えます。

 

当院ではこれらの痛みや症状を椎間板ヘルニアに伴う関連痛と位置付け、その原因は筋肉の異常な収縮にあると考えています。

 

筋肉の異常収縮を解消すると、急性期の激痛以外の「鈍痛」「引き攣れ」「しびれ」などはその場で半減したり、完全に消失したりします。

 

■ 日常生活を続けながら根治を目指す

この筋肉由来の関連痛は、じつはかなりの激痛にまで発展することもあって、神経圧迫による痛みと区別がつきにくいこともあるのですが、筋肉を緩める施術を行って痛みが無くなれば神経圧迫では無かったと判断できます。

 

経験上、激痛も8:2くらいの割合で筋肉由来のものが多いです。

 

椎間板ヘルニアが何故起こるのか?という発生メカニズムに関してはここまで触れてきませんでしたが、簡単に言うと「細胞の代謝不足により、椎間板に古くて脆い細胞が残ったために起こる、椎間板の形状が不安定になる現象」ということです。

 

代謝不足は「自然治癒力≦負荷」の構図で示されます。自然治癒力を増し、負荷を減らすことで、椎間板の回復を早めることができます。(自然治癒力と負荷の解説はこちらをご参照ください。自然治癒力とは何か?負荷とは何か?)

 

筋肉由来の痛みの解消によって自然治癒力を増し、自分では気付けない日常生活の負荷を見直すことで、現在の生活を続けたまま椎間板ヘルニアの根治を実現します。

 

■ 腰椎椎間板ヘルニアの回復経過

 

回復例の一部をご紹介します。慢性腰痛から腰椎椎間板ヘルニアを発症した歯科医さんのお話です。経過が分かりやすく示されておりますのでご一読ください。

 

腰椎椎間板ヘルニア 北山晴臣さん(仮名) 42歳 歯科医師

 

● 椎間板ヘルニアが回復する事例が多いと聞いたので

 

-痛みの経緯を教えてください-

 

 いまの痛みは3か月前からですが、ヘルニア自体は20代の終わりごろになりました。私は歯科医ですが、歯科医はみんな腰痛持ちなんです。朝から晩まで前屈みで治療しますからね。職業病みたいなものだと思っています。最初は最近腰が張るなぁという感じでした。それからだんだん重く痛く…というよくあるパターンですね。初めてヘルニアになった時は、あまりの痛さに驚きました。あ、これはやったな、とすぐわかるような痛みでしたね。それから数年おきに再発するような状況です。

 

-初めはどうしましたか?-

 

 仕事の姿勢が腰痛に関係あることはよく分かっていたので、姿勢を頻繁に変えたり、椅子を変えてみたりして対処していました。マッサージはあまり好きではなかったので行きませんでした。腰が張るなぁ重いなぁという間は対処らしい対処はしませんでしたが、ヘルニアになった時はすぐに整形外科に駆け込みました。自分ではほとんど動けないような状態だったので家内に車を出してもらい、なんとか整形に辿りつきました。レントゲンを撮って椎間板がはっきり飛び出ているのを確認して、やっぱりな…と思いましたね。

 

-その後は?-

 

 手術するかどうか?の選択だったですが、手術すると通常、復帰までに1か月以上掛かります。そんなに長くクリニックを不在にするわけにもいきませんから、薬と安静で済むならということで、様子をみることにしました。

 痛みが強い間は、なるべく休むようにすることと痛み止め、コルセットで乗り切りました。患者さんを連続で入れないようにしたり、逆に何人かまとめて空き時間ができるようにしたり、いろいろ調整しながら、だましだましやっていく感じですね。それで痛みがおさまっている間はよかったんですけどね、最近は強い痛みまではいかないけど、いつも腰が痛くてたまに大激痛に見舞われる。その繰り返しで、しかも段々激痛の周期が短くなってきている。今回の痛みの1年前にも激痛があったから、毎年になっているんですよね。これはマズイ状況です。

 

-こちらにはどなたかのご紹介で?-

 

 家内の友人がこちらに通っていて紹介されたんですが、HPを見て「お!?これは面白そう」と思って予約しました。通常、椎間板ヘルニアになれば回復しないというのが常識です。でもそれが回復すると言っている。まぁ回復すると言っているところは沢山あるんですけど、筋肉の緊張を解消してゆらしながらゆっくり引き伸ばしていく、と書いてあったので、これは当たりかもしれないと思いました。

 引き伸ばす作業は前後左右の運動を加えた方が効果的ですからね。

 当日の腰の状態は小康状態というところでしたが、施術を受けるとずいぶん楽になった感じがありました。受けている時はなんというか、やさしすぎて心許ないというか、頼りない気がしましたが、痛みが出ないように丁寧に探ってくれていたと思うと納得できます。これに慣れると他の治療は怖い感じがするんじゃないですかね。

 

-痛みの経過はいかがですか?-

 

 1回目でその時の痛みの半分以下になりました。2回目でさらに半分。3回目で施術直後の痛みはほとんど無くなったように思います。

 しかし椎間板をやられていますから、時間が経つと少しずつ痛みが戻ってきます。私は痛みが戻るのは仕方ないことだと思っていたのですが、先生に聞いたら、なんと大丈夫だという返事が返ってきました。だいたい2~3か月あれば椎間板の弾力が出てくるということで、弾力が出ればはみ出し部分、飛び出し部分もおさまると説明されました。その時はそれはどうなんだろう?と思いましたが、「椎間板が飛び出して神経圧迫して痛みがでるのなら、椎間板が飛び出している間はずっと痛いはずでは?」と説明を受けて、そういう可能性もあるかと思いました。

 つまり私の場合、神経圧迫が痛みの原因とするなら、周期的に激痛が出ていた谷間の時間は神経圧迫がなかった、あるいは少なかったと考えられるわけですよね。では、その時椎間板がどういう状態にあるのか? 神経圧迫したままでも痛みが出ないとしたら、それはなぜか? 神経圧迫してなかったとしたら椎間板の状態は変化しているわけだから回復しないと言い切れるのはなぜか?といった疑問がでてきて、先生の「回復する」と言葉を信じてみようか、と思ったわけです。

 

-結果はどうでしたか?-

 

 いま施術を始めてから3か月ちょっとです。日々の診療業務はそのままやってますが、痛みが無いんですよ。ちょっと驚いてしまいますね。疲れてくると腰の重さは出ます。でも、ずっと抱えてきた腰の感じとは明らかに違うんですね。少し前にレントゲン撮ったんですが、はっきり見えていた椎間板の影は半分よりちょっと少ないくらいまでになっていました。

 どういうことなのかまだ決められませんけど、回復の可能性というのは確かに感じています。もうちょっと様子をみて、いろいろ考えてみたいです。しかし楽なのは本当に実感しています。体感として理解しているわけですから、この感覚は噓偽りないものですよね。ありがとうございます。

 

-貴重なお話ありがとうございました-